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大豆を食べると肺気腫を防げる?

プレスリリースはこちら

この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
◆8/30 朝日新聞
◆9/16 食品新聞
◆9/26 神戸新聞
◆SOY FOOD JOURNAL 9月号
◆11/4 日本の身土不二

本研究のポイント

◇ イソフラボンがCOPD予防に効くメカニズムをマウス実験で証明
◇ 疫学研究でも報告されていなかったイソフラボンによる肺気腫抑制効果が明らかに

概要

 水果老虎机_水果机游戏-中彩网官网推荐大学院医学研究科 呼吸器内科学の小島和也大学院生、浅井一久准教授、川口知哉教授らの研究グループは、抗酸化物質で大豆などに含まれるイソフラボンがCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の予防効果を有することを明らかにしました。
 COPDは日本では約500万人以上が罹患しており、進行すると咳や痰、息切れを自覚し、在宅酸素療法を必要とする患者さんもいます。COPDによる死亡者数は年々増加しており、WHO(世界保健機関)の報告ではCOPDは世界の死因第3位の疾患で、COPD患者の肺では、マクロファージ※1や好中球※2などの炎症細胞の増加、肺胞壁の破壊による肺気腫が見られます。現時点では破壊された肺を元に戻す有効な治療法はなく、予防が肝要とされています。これまで疫学研究では大豆摂取によるCOPD発症リスク低減が報告されていましたが、そのメカニズムは解明されていませんでした。
 そこで浅井准教授らの研究グループは、喫煙曝露によりCOPDを発症するマウスにイソフラボンを投与したところ、炎症細胞の減少や肺気腫の抑制効果を認めました。また、肺組織中の炎症形成に関わるサイトカイン※3 等の上昇を抑制することも確認しました。本研究は、イソフラボンが抗炎症作用によりCOPD予防を果たすことを実験的に明らかにしたもので、今後のCOPD治療確立に向けて重要な知見であるといえます。
 本研究成果は国際科学雑誌『Nutrients』に日本時間2019年8月29日(木) 14時にオンライン掲載される予定です。
※1 マクロファージ(大食細胞)…白血球の一種で異物を捕食して消化する作用がある。炎症時に活発に働く。
※2 好中球…マクロファージと同じく食作用を有する白血球で、COPDの気道炎症の中心をなす。
※3 サイトカイン…細胞間の情報伝達の役割を担っており、炎症反応を促進するものもある。

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浅井一久准教授

?研究者からのコメント
 現時点のCOPD治療は、気管支拡張薬等を用いてCOPDに冒されず残存している肺を有効に活用する治療にとどまっています。今回の結果は抗酸化物質による炎症制御、COPD予防効果を示したものであり、COPDの症状でお困りの患者さんに新たな治療法をお届けできるように研究を進めて参ります。

研究の背景

 COPDは主にタバコ煙を含む有害物質の吸入により発症する肺疾患で、COPD患者の肺では、マクロファージや好中球などの炎症細胞の増加、肺胞壁の破壊による肺気腫が見られます。現在のCOPD治療は、悪化した肺機能を改善させることを目的に気管支拡張剤の吸入を行いますが、効果は限定的であり根本治療ではありません。COPD予防には早期の禁煙が重要ですが、新たな予防?治療法の確立が望まれています。
 大豆は豆腐や味噌などの主原料で、日常生活において広く摂取されています。大豆製品に含まれるイソフラボンには抗炎症効果が報告されており、疫学研究において大豆製品の摂取量が多い群は少ない群に比べてCOPDになりにくいと報告されています。また、息切れや咳、痰の症状が軽減される可能性も指摘されています。しかし、そのメカニズムの詳細は解明されていませんでした。

研究内容

 本研究では、マウスに12週間の喫煙曝露を行い、餌へのイソフラボン添加の有無がCOPD病態へ及ぼす影響を検討しました。イソフラボン投与群では、BALF(気管支肺胞洗浄液)中の好中球数が有意に減少し【図1】、肺気腫の程度を示すMLI(平均肺胞径:mean linear intercept)の上昇を抑制させました【図2】。
 また、好中球性炎症を抑制した機序を検討するために、肺組織内の炎症を誘導するサイトカインやケモカイン※4のメッセンジャーRNA(mRNA)やBALF中のタンパク質を測定したところ、肺組織中のサイトカインであるTNF-α(腫瘍壊死因子)やケモカインの喫煙曝露による増加がイソフラボン投与により有意に抑制されていました【図3】。
※4 ケモカイン…サイトカインの一種で、炎症の形成に関与する。

1 BALF (気管支肺胞洗浄液)

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2 MLI (平均肺胞径:肺気腫の程度)

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3 BALF (気管支肺胞洗浄液)中の遺伝子検査

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期待される効果

 本研究において、イソフラボンの投与により好中球性炎症が抑制され、肺気腫が予防されることが示され、疫学研究で報告された大豆摂取によるCOPD予防効果のメカニズムの一端を解明しました。COPD患者においてもイソフラボンを摂取することで肺気腫の抑制、改善ができることが示唆され、COPD治療戦略の新規候補として注目されます。

資金情報

 本研究は、科研費基盤(C)(19K08660)の研究の一環です。

掲載誌情報

発表雑誌:Nutrients(IF=4.171)
     https://www.mdpi.com/journal/nutrients 
論文名:Isoflavone Aglycones Attenuate Cigarette Smoke-Induced Emphysema via Suppression of Neutrophilic Inflammation in a COPD Murine Model
著者:Kazuya Kojima, Kazuhisa Asai, Hiroaki Kubo, Arata Sugitani, Yohkoh Kyomoto, Atsuko Okamoto, Kazuhiro Yamada, Naoki Ijiri, Tetsuya Watanabe, Kazuto Hirata and Tomoya Kawaguchi
論文掲載URL:https://www.mdpi.com/2072-6643/11/9/2023/htm